一番ヤバそうな人が一番まともだった。映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』ネタバレ感想

こんばんは、うめこです。

今回はかなり真面目なドキュメンタリー映画のご紹介です。

アメリカって、もはや定期的に銃乱射の事件が報道されていませんか?統計によると、アメリカではおよそ年間1万1,000人が銃により亡くなっているそうです。そして、アメリカ市民の実に4割が銃を個人的に所有していると。

参考としまして、銃のお値段は自動小銃はおよそ1500$(日本円107.8×1,500=161,700円)、短銃は安いモノで200$(日本円107.8×200=21,560円)ほど。

映画や舞台、文学、音楽などではうめこにとって身近で大好きなアメリカですが、ドラマ「ブレイキングバッド」でご紹介したような医療制度問題や銃の扱いに関する考え方に触れると、とても文化的に深い溝を感じてしまうこともあります。

一体、アメリカの銃社会はどんな仕組みになっているのか?それの一部を見ることが出来るのが、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』です。

コロンバイン高校銃撃事件とは

 
ボウリング・フォー・コロンバイン(字幕版)

1999年4月、アメリカ合衆国コロラド州コロンバイン高校で、この高校の生徒二人が校内にて銃を乱射、生徒と教師13名を殺害し、実行犯二人も自殺するという凄まじい事件がありました。

マイケル・ムーア監督は「何故こんな事件が起こりうるのか?」という疑問を抱き、銀行にて「新規口座開設のおまけ」として銃を配るアメリカ合衆国という国に対して、銃社会に対して鋭く切り込んでいきます。

そう、冒頭からのけ反ってしまいました。日本ですと「銀行の新規口座開設」のおまけなんてラップか洗剤かティッシュじゃないですか。それがアメリカだと銃がついてくる!銃ってそんな気軽に貰えちゃうの?!と。

人々が求めるのは、わかりやすい憎悪対象である

犯人の生徒に影響を与えたと槍玉に挙げられたのが、ロック歌手マリリンマンソンでした。うめこは彼のことを知らなかったのですが、調べてみると、まあ、確かにかなり過激な作風とキャラクターですね。しかしこの映画でムーア監督が彼に行ったインタビューに、うめこは大変感銘を受けました。見た目は完全にビジュアル系なのですが、言葉の一つ一つに知性と誠実さが滲み出てるとでもいうのでしょうか。

事件後、若者の残虐性をあおるアーティストとして憎悪の対象となったマリリンマンソンは、ツアーを中止せざるを得ない事態にまで追い込まれています。そのことについて、彼はインタビューで「事件のことで自分が非難の対象になっている理由は分かる。自分を犯人に仕立て上げれば人々にとって都合が良いからだ」と冷静に語ります。
「毎日のテレビニュースで、人は恐怖を詰め込まれる。政府とマスコミが恐怖と消費を煽っている。アメリカの経済はそういう仕組みになっている」
最後に、犯人の高校生に何か言いたいことはあるか?という問いに、彼は答えます。

「何もない。ただ黙って彼らの言いたいことを聞く。誰一人としてそれをやらなかった」

マリリンマンソンは自分の作品がどういうもので、どう世間に受け止められているのかは良くわかった上で活動しているのですよね。それ故に、自分が「世間にとって都合のいい憎悪対象」になってしまったことも嫌になるほど理解しているんです。そのことを非常に落ち着いて語る様子が印象的でした。

「黙って彼らの言いたいことを聞く」
こんな答えが、一体どれだけの人から出てくるでしょうか。

後日、犯人の少年がマリリンマンソンのファンだったというのは全く事実無根であったことが判明しています。

最強の圧力団体、全米ライフル協会(NRA)

さて、この映画の中でマリリンマンソンと対極的な存在感を放っているのが、全米ライフル協会(以下NRA)です。

この団体は全米最強の圧力団体とも言われます。巨額の資金を政界に送り込み、銃規制を強化しようとする法案を繰り返し阻止してきました。法案どころか、銃暴力に関する公的調査すら、妨害しています。(BBC NEWS JAPAN2018.11.14記事より)

映画『ベン・ハー』でアカデミー主演男優賞を受賞したチャールトン・ヘストンが、撮影当時のNRA 会長でした。ムーア監督のインタビューに応じるものの、彼は銃暴力について問われると無言で部屋を去ってしまいます。その後ろ姿が何ともみっともない(すみません、あくまでうめこ主観です)。その是非は観客各々が決めるとして、せめて銃を擁護する身としての主張を真っ直ぐ伝えてほしかったです。うめこは「武装する権利の擁護」をうたってきたNRA として、それがどんな主張であれ、銃乱射事件についての見解をきちんと聞きたかったです。

ちなみに歴代大統領の中でも銃規制を推進していた人たちはいて、最近ですとバラク・オバマ元大統領、意外なところで現職ドナルド・トランプ大統領が現在の銃の扱いをより厳しくしようという提案をしているそうです。何度も言いますが、これは調べてみて意外でした。

さて、純粋にその所有率が銃による死傷者の数を押し上げているかと思いきや、お隣のカナダではアメリカ同様の所有率にも関わらず、死亡者数がまるで違うんです。ならば、アメリカとカナダの決定的な違いは何なのだろう?とムーア監督は疑問を投げ掛けます。

まず、アメリカとカナダの報道の仕方に違いがあるのではないかとムーア監督は推測します。マリリンマンソンの指摘する「恐怖を詰め込まれる」状態の報道は、特に特定の人種と凶悪事件を選んでいるように思えると。さらにそこに「自己防衛」を説き、銃への依存を深めていくというシステムが構築されていくと、ムーア監督は考えます。

ドキュメンタリー映画を観るとき

散々映画の解説をしておいて、根底をひっくり返すようなことを言うのは心苦しいですが、ここで偉人のお言葉。

”何を読もうと聞かされようと 自分自身の理性が同意したこと以外何も信じるな”

ゴータマ・シッダールタの言葉です

『ここは今から倫理です。』第1巻 雨瀬シオリ 集英社 より引用 

えー、出典元が調べきれなかったため、漫画内で引用された名言をさらに引用するという事態になってしまいましたが・・・つまり、これはドキュメンタリー映画を見るときのうめこなりの心構えでございます。

うめこは基本的にムーア監督の切り込み方にはワクワクしますし、考え方に共感できることが多いです。しかし、同じことを報道しても、言葉の選び方や、音楽の使い方、場面の切り方で製作者の意図する方向へと知らずに連れて行かれていることもあると思うのです。特にムーア監督はアカデミー賞の受賞スピーチで「恥を知れブッシュ!」と叫んでしまうようなお人ですから、映画に託す主張も強い。こういったドキュメンタリー映画は私たちの知らない世界を切り開いてくれますが、うめことしてはあまりどっぷりとつかってはダメかな、と思います。

ドキュメンタリーを見るときは、適度な距離で「こんな現実や考え方もあるんだね」くらいがいいかもしれませんね。

とはいいつつ、これもおすすめです。

 
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結局、好きなんです、ムーア監督。

ではでは。

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