何だか絵を見に行きたくなる美術漫画!ヤンキーが藝大を目指す『ブルーピリオド』山口つばさ 講談社

こんばんは、絵を書くのは好きだけど、下手くそのうめこです。

今回ご紹介したいのは『ブルーピリオド』(山口つばさ 講談社)。高校生が超難関、東京藝術大学の油絵科を目指す作品です。

実はうめこは音楽が身近にあったくせに、フィクションで音楽を扱ったものはそこまで・・・なんですよね。『のだめカンタービレ』は二宮先生の軽いタッチだったので楽しく読めましたが、なんだか身近にあったものが題材だと、少々自分と重ねることがあったりして純粋に物語を楽しめないのかもしれません。

その点、うめこにとって美術系の作品の距離は本当に心地いい!答えのないものを追いかける大変さは共感できるし、でもジャンルが違うのでフィクションとしても肩の力を抜いて楽しめるんです。

目指すのは実質倍率200倍の東京藝大!『ブルーピリオド』(山口つばさ 講談社)

  
ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

名作揃いの月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の作品です。作者の山口つばささん自身も東京藝術大学のご出身だそう。そのせいか、表紙や扉のデザインが一枚の「絵画」としての構図を意識しているように思えます。どれもとっても素敵!

ざっくりあらすじとしてましては、主人公は高校二年、夜遊びも酒も煙草もやるヤンキーですが、真面目にコツコツ勉強もして成績優秀、クラスメートの人望も厚いという何でもできる系ヤンキーです。その主人公が「さぼって寝れるから」という理由で選択した美術の授業で、一枚の絵を描き上げるところから物語が進んでいきます。

サッカーの試合観戦で夜明かして明け方の渋谷の気だるい空気を歩きながら「渋谷の早朝って青い」と感じる主人公。友達にはなかなか伝わらず、偶然荷物運びを手伝った美術部員の3年生から言われた「そう見えるなら、りんごもうさぎも青くたっていい」という言葉に触発されて、適当にこなすつもりだった美術の課題に真剣に取り組み始めます。

未熟ながらも完成させた青い渋谷の絵に、友達も「早朝の渋谷」を表現したのだと気が付いてくれます。そこで、つい涙目になってしてしまう主人公。

その時生まれて初めて ちゃんと人と会話できた気がした

『ブルー・ピリオド』(山口つばさ 講談社) 第一巻 1筆目「絵を描く悦びに目覚めてみた」 より引用

適当な上っ面の会話は得意だった主人公が、自分の本当に感じたことを人に伝えられたのが「絵」だったという瞬間でした。ここが本当にいい場面なんです!

そして、その後に始まる美術の先生からの怒涛の「美大事情講座」。実際に東京藝大の出身だけあって、相当リアルなんですよね。とっても勉強になります。

●東京藝術大学の絵画科の受験倍率は日本一。現役生の倍率でいうと60~200倍。

●2浪~4浪は当たりまえ!7浪の方すらいる!ある意味東大よりも難関である。

うめこのこのマンガを読むまではここまで凄まじいとは思いませんでした。もちろん素晴らしい美大は私立にもたくさんありますが、レベル、授業料の安さの点でも藝大は頭三つほどとび出ているいるのですね。

普通の大学だって「食べていける保証」があるわけじゃない!

 
ブルーピリオド(2) (アフタヌーンコミックス)

ここで、音楽・美術系の道に進んだ人なら一度は必ず自ら問いかけ、そして他人に問われること。

先生、絵って趣味じゃダメですか?食べていける保証がないなら美大にいくメリットってなんですか?

『ブルー・ピリオド』(山口つばさ 講談社) 第一巻 2筆目「有意義な時間」 より引用

その主人公の問いかけに、先生が答えます。

どうして普通の大学なら食べていける保証があるんでしょうか?

「好きなことは趣味でいい」これは大人の発想だと思いますよ 誰に教わったのは知りませんが 

好きなことに人生の一番大きなウエイトを置くのって 普通のことじゃないでしょうか?

『ブルー・ピリオド』(山口つばさ 講談社) 第一巻 2筆目「有意義な時間」 より引用

そうなんですよね!!普通の大学だって、食べていける保証があるわけじゃない、それは社会に出てこそわかること。高校生がそう思い込んで、その理由だけで「好きなこと」を諦めるのはとてもとても悲しいと思うのです。先生、しびれます。余談ですが、この美術部の先生が本当に素敵すぎなんですよー。

美術を本気でやってみたい、でもまだ怖さが抜けきらない。迷う主人公に、さらに先生が言います。

「正直今揺らいでて でも確信が持てなくて 美大って俺入れると思います・・・?」

「わかりません!でも好きなことをする努力家はね 最強なんですよ!」


『ブルー・ピリオド』(山口つばさ 講談社) 第一巻 2筆目「有意義な時間」 より引用

その言葉で、美術部入部と美大受験を決意する主人公!そこはさすがマンガ、展開が早い!

全部が誰かの作品なら、コンビニだって美術館みたいなもの

 
ブルーピリオド(3) (アフタヌーンコミックス)

今までは何でも器用にこなしていた主人公ですが、初めての絵画の技術を習得しようと、とにかく描きまくる日々。かなり細かい技術的な解説もあるので、読者も一緒に学んでいけます。てか、ちょっと習ってみたくなります

しかし、努力して時間を掛けることは得意な主人公でも、正解のない「表現するということ」にしばしば息詰まることも。ヤンキーなのに根っこは真面目すぎる主人公に、予備校仲間がコンビニにてあっけらかんと言います。

ここにあるモンみーんな誰かが考えて作ってんねんやろ?

そしたらコンビニも美術館みたいなモンやん

『ブルー・ピリオド』(山口つばさ 講談社) 第3巻 9筆目「課題が見えてもどうしようもねぇ」 より引用

なるほど!!とうめこも主人公と一緒に目から鱗が落ちました。そう考えると、町の看板ひとつとっても、デザインを考えて誰かが作っているんですよね。そんな柔軟な発想で世界を見ると、なんだか何処にいたって退屈しなさそうです。この発想転換が本当に面白い!

作中の絵画も見どころ!

 
ブルーピリオド(4) (アフタヌーンコミックス)

さて、さっきまで熱く語ったようにストーリーも素晴らしいのですが、加えて作中に実際の絵画作品が沢山出てくるところがこの作品の大きな魅力です。しかも、全部がそうではないものの、作者以外の方が描いた作品を、それぞれの登場人物に合わせてチョイスしているよう。主人公の絵は○○さんが主に担当・・・というように。この徹底ぶり!きちんと、実際の作者名もクレジットされています。

さて、今回ご紹介の『ブルーピリオド』は2019年7月現在、5巻まで発売しています。まだまだ続いていく模様!うめこが発売日に走って買いに行くマンガのひとつです。

美大という特殊で魅力ある世界をちょっと覗いてみたい・・・そんな方に絶対おすすめです。うめこの記事で少しでも興味を持っていただけましたら、幸いです。

ではでは。

こちらもお勧め漫画。これは読んでおくべき!教科書にしたい漫画ベスト3!

 
ブルーピリオド(5) (アフタヌーンコミックス)

 

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