今読み返すと恐ろしさが倍増の小説『ザ・スタンド』(スティーヴン・キング 文春文庫)高致死率のインフルエンザで滅びゆく世界を描く

こんばん、うめこです。

「うめこ、またスティーヴン・キングかよー」と思われてしまいそうですが、昨今の新型コロナウィルスに世界が振り回されている様子を目の当たりにして、うめこがまず読み返したいと思ったのがこの小説なのですよ。

 
ザ・スタンド(1) (文春文庫)

あらすじをざっくり引用しますと、

猛然たる致死率と感染力を持つインフルエンザ・ウィルスが漏洩した。それと知らず、それぞれの人生を真摯に生きる人々。未婚で妊娠した学生、突然の成功に惑うロックシンガー、人の暖かさを知った放浪の青年・・・彼らの流す絶望と悲嘆の涙のなか、静かに世界は死滅してゆく。

『ザ・スタンド』第一巻(スティーヴン・キング 文春文庫) 表紙あらすじより引用

まあ、そのまんまなんです。しかも、メインストーリーは世界のシステムが滅んだ後から始まるようなものなのですが、うめこが鮮烈に思い出したのがその序章であり、脅威のインフルエンザ(作中ではキャプテン・トリップスと呼ばれています)が蔓延していく様の描写だったんです。

これが、キング様の「市井の人々の生活をネチネチと巧みに描く」という特徴が物凄い効果を発揮して、恐ろしさを倍増させているんですよ。今だからこそ、うめこはこの描写の怖さを肌で感じます。

例えばこのとある一家が息子ヘクターの具合が悪いことに気が付き、病院を訪れた場面。ちなみにこの一家はメインキャラクターでもなんでもありません。

待合室は込み合っていて、ヘクターが診てもらえたのは、やっと四時になってからだった。トリッシュは診察のあいだヘックを眠らせまいとしていたが、いくら起こしても、泥のような昏睡に陥ってしまう。彼女自身、発熱しているのを感じていた。ひとり九歳のスタン・ノリスだけが、いまはまだ元気で、しきりに待合室でそわそわしていた。

スウィーニーの待合室にいあるあいだに、ノリス一家はのちに崩壊に瀬したこの国全体に<キャプテン・トリップス>の名で知られることになるこの病気、それをおよそ二十五人もの町人にうつした。その中には、たままた医療費を支払うために立ち寄っただけの、町の世話役ともいうべき女性がひとり含まれていて、彼女はその足でいつものブリッジクラブへ向かい、クラブの全員にその病気をうつした。

『ザ・スタンド』第一巻(スティーヴン・キング 文春文庫)181頁より引用

そして、こうした場面が続々と続きます。キング様の筆が乗りに乗っているのを感じます。今度は上記のクラブに参加していた女性たちがウィルスをばら撒くシーン。

セアラはウォードエイドを注文し、ふたりの女性は、大賞したきょうのブリッジの話題を蒸し返した。話に熱中するかたわら、ふたりはカクテルバーにいあわせた全員に、問題の病気を感染させた。そのなかには、近くの席でビールを飲んでいたふたり連れの青年も含まれていたが、彼らは(一部省略)カリフォルニアで一旗揚げに行く途中だった。彼らの友人のひとりが、あるバンドのツアーに仕事の口があると約束してくれていた。翌日、彼らは西へむかって出発し、と同時に、病気をばらまいていった。

『ザ・スタンド』第一巻(スティーヴン・キング 文春文庫)182頁より引用

こうして名もなき人々が病気を広げていく描写に、キングはかなりの量を割いています。そして、この描写そのままのことが今リアルタイムで起こっているんですよね。

うめこ自身、このコロナの蔓延していく渦中にいる今、もっと気を引き締めて生活をしていかないとと思ってこの小説をご紹介してみました。

使い古された言葉ですが「事実は小説より奇なり」

キングの想像力で生み出された「ザ・スタンド」のような世界にならないよう、祈るばかりです。

ではでは。

コメント

タイトルとURLをコピーしました