
こんばんは、結構あからさまに年末よりも体脂肪が増えて絶望している最中のうめこです。
美大漫画は以前『ブルーピリオド』を紹介しましたが、今回はまた違うタイプの美大漫画です。
『ブルーピリオド』の時にも語りましたが、うめこはちょっと音楽系の物語は苦手で、美術系は大好き!な傾向があります。やってたのは音楽なんですが・・・
モディリアーニにお願い 1 (ビッグ コミックス) (ビッグコミックス)
さて、『ブルーピリオド』がゴリゴリのシビアな美大事情を描く話だったのと対照的に、
この『モディリアーニにお願い』はまるで絵本のような優しいタッチで、美術に関わる若者達の心の動きに焦点を当てて、繊細でとっても優しい目線で描いた作品です。
もう、大好き。
そして、これを読むとうめこは必ず泣いてしまうのですよ。
ざっとあらすじをご説明しますと、舞台は東北。主人公3人の通うのは「バカでも入れる美大」であると冒頭で語られます。実際、他大学の生徒に「レベルが低い大学」と嘲笑される場面がありますね。
しかし、登場する先生は皆素敵だし、生徒達は真剣に美術と向き合っている様は「本当にやりたいこと、作りたいものがあるとき、箱(大学)はそんなに重要かなあ?」という気持ちにさせられます。
ここんとこも、頂点の大学を中心に据える『ブルーピリオド』とは違いますね。『ブルーピリオド』のヒリヒリした感じも大好きですが。
主人公は美大に通う男子学生。お馬鹿だけど作品に対しては真っ直ぐで猪突猛進系の千葉、千葉の幼馴染みで美術に対してはひたすら真面目で悩み多き藤本、学生にしてすでに天才と呼ばれる本吉(もっくん)の3人です。
ネタバレになってしまいますが、この作品は東北が舞台ということで東日本大震災の爪痕が深く深く関わってきます。
主人公の一人、もっくんの出身は津波で全てを流された地域。妹、両親、家を失っており、それが天才と言われている彼の作品や心の動きに影響を与え続けています。
しかし、当のもっくんは周りに自分の作品に震災の影を見られること、「被災者」として見られることを何よりも恐れ、拒否しています。
彼のこういった心情の描きかたが本当に鬼気迫るというか、読むものを物語の中に引き込んでくるんですよ。
一番うめこが涙腺崩壊したのが、3人が出会って間もないころのエピソード。
震災で家族を失ったもっくんは一年留年して、学校に戻りました。そこに入学してきた千葉と藤本は妙にもっくんに懐いてぐいぐいと距離を縮めていきます。そのころ、もっくんは他人に「かわいそうな人」として見られ、本当の自分自身や作品をまっすぐ見てもらえないことに深く悲しんでいました。
そこで、とうとうある日千葉がもっくんに尋ねてきます。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「・・・・・」「何?」
「いや・・・なんかずっと気になってたんだけどっ・・・聞いていいかわかんなくてさ。」
「・・・あはは、何だよ?」
(何を聞くんだろ。留年のこと?津波のこと?家のこと?地元のこと?全部流されたよ。
全部流されたよ!それでいいだろもう。)
(この世界のことが大好きなのに。ただそういう話がしたいだけなのに。)
『モディリアーニにお願い』(相澤いくえ 小学館)170頁~171頁より引用
それまで自然に接してくれていた千葉から、何を言われるのか痛々しいまでに身構えるもっくん。
そこで千葉が意を決して尋ねてきたのは、
「もっくんの誕生日っていつかな!? わ~!!やっと聞けたぁ!!!」
~略
「大きくなると、誕生日聞くのって恥ずかしーじゃん!なんか、一番恥ずかしいじゃん!!」
『モディリアーニにお願い』(相澤いくえ 小学館)172頁より引用
その場はあっけにとられたものの、家に帰ってうどんをすすりながら次第に涙があふれ出てくるもっくん。うめこもここで一緒にいつも泣いてしまいます。
こういう繊細な描写が本当に素敵な漫画なんですよ!!
また、うめこはこの作品の作者相澤いくえさんにもとっても惹かれるものを感じています。作品から滲み出てくる優しさや世界を見る目の繊細さからもお人柄を勝手に想像出来るのですが、あとがきの雰囲気も大好きなんです。
うめこには何人か「この人の作品は絶対に買う!」という作家さんがいますが、「いつかサイン会に行きたい、会いたい!」って思うのはこの方ぐらいなんですよね。
井上雄彦先生やよしながふみ先生は神様だと崇めてますが、お会いしたいとは全然思わないんです。
この違いは、自分でも不思議。
『モディリアーニにお願い』は現在は4巻まで出ています。
まだあまりメジャーではないのですが、うめこは是非是非誰かとこの漫画についてネチネチと語りたいのです。読んでみてくださいっ!!
ではでは。
漫画紹介についてはこんなのもあります。
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