ガンジーが主人公の異色のオペラ『サティアグラハ』(GLASS『SATYAGRAHA』)紹介

こんばんは、うめこです。

今回はうめこのCDコレクションの中でも一際マニアックなオペラ『サティアグラハ』をご紹介しようと思います。

『サティアグラハ』は現代の作曲家フィリップ・グラスによるマハトマ・ガンジーを主人公とした異色のオペラです。何故異色かと言うと、このオペラ、歌詞が全てサンスクリット語なんですよね。

「何、それ?」な言葉ですよね。これは古代のインドで紀元前から使われていた大変歴史のある言葉で、劇中の歌詞はインドの叙事詩バカヴァッド・ギーターより引用されています。補足しますと、サンスクリット語は仏教用語に多々使われていますので、曼陀羅(マンダラ)、阿修羅(アスラ)、卒塔婆(ストゥーパ)など、我々日本人にとってもなんとなく聞き覚えのある言葉もあったりします。このサンスクリット語は様々な言語の由来ともなっていまして、一説ではヨーロッパ各地に散らばるロマの言葉もこのサンスクリット語が元になっていると言われています。ゆえに、ロマ達のルーツは北インドであると推測されるとか。元々使われていた名称「ジプシー」とは、彼らは褐色でエジプト人に似ている→エジプト→ジプシーという由来での超適当な呼び名だったんですよね。

さて、オペラ題名である「サティアグラハ」とは非暴力・非服従を意味するサンスクリット語です。ガンジー象徴する言葉であると言えます。

このオペラの面白さとして、登場人物の言葉がサンスクリット語で話されているのではなく、あくまで歌詞はすべて古典である『 バカヴァッド・ギーター 』の引用のみ。日本の題材で例えますと、「源義経」の人生を描いた作品だけれど、その歌詞はすべて「古今和歌集」の歌で構成されている・・・とでも言いましょうか。ちょっとうまくお伝えする自信がないですが・・・

つまり、「言葉」で物語を伝えることは最初から放棄されていまして、観客は舞台上の役者の演技と、音楽の流れ、演出で物語を読み取っていくことになります。うめこも、一度舞台を観たからこそ場面を想像できますが、これは最初からCDだけですとチンプンカンプンですね。しかし、音楽だけでも十分美しいので聞く価値はあります。

オープニングには神話の一部などを織り込みつつも、舞台は南アフリカから始まります。うめこは無知なもので、このオペラを観るまではガンジーがかなり国際的に活動していた人とは知らなかったんですよね。生まれはインドであるものの、当時インドを植民地にしていたイギリスに渡り弁護士の資格を得ます。その後、現在の南アフリカ共和国で弁護士として活動を始めました。

やがて、南アフリカの地で激化してくるイギリス政府によるインド人への差別。この地に暮らす全てのインド人の指紋を採取するという法律が制定されると、人々の反発が一気に高まります。ここから、ガンジーはインド人の権利回復を目指す運動へと身を投じていきます。

人種差別やガンジーを中心としてそれに抵抗する人々の物語なのですが、音楽は至って穏やかで美しいメロディが続きます。

作曲者のフィリップ・グラス1937年生まれのアメリカ人。今現在、ご存命ですね。ミニマル・ミュージックと呼ばれる独特な現代音楽のジャンルを得意とする方です。映画音楽でも活躍しています。メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマンの名作『めぐり逢う時間たち』の作曲も彼が手がけています。余談ですが、これ、本当に素晴らしい映画です!!

ミニマル・ミュージックとはシンプルなメロディやリズムを繰り返し演奏する音楽で、「反復音楽」とも言われます。現代音楽と言うと、うめこはとっさに「十二音音階」のような本当に複雑怪奇なメロディを想像してまいますが(決して嫌いではないのですが)、このミニマル・ミュージックはむしろヒーリング・ミュージックに近い印象のものが多いです。反復の心地よさとでもいいますか。うめこは『サティアグラハ』はストレッチやゆっくり本を読むときになんとなく流すことが多いです。

全編がこのミニマル・ミュージックなので、激しい暴動などのシーンでもある一定の美しさと調和を保ったまま物語が進みます。

いつか聞いてみたい!と興味を持って下さる方がいることを願って、うめこの一押しの曲を。

第三幕「王」のPart.3

ガンジーのソロ曲ですね。1913年、ガンジーは労働者と政府に抵抗する者たちと共に、抗議行動として36マイル(58㎞ほど)を行進しました。その際に人々に語りかけるシーンで歌われます。これが本当に美しいの一言なんです。そもそも、うめこがこのオペラに興味を持ったのも、メトロポリランオペラのライブビューイングの宣伝で、一瞬、この曲が流れたからなんですよ。ほんの少しだったのに、「なに、このきれいなの・・・」と引き込まれてしましました。

気持ちが疲れているときには、ぼうっと聞いていたい一曲ですね。

『サティアグラハ』は「これぞ、オペラ!」というカタルシスを味わえるような作品では決してありませんが、不思議と吸い込まれるような魅力を持っているとうめこは感じます。

歌詞に頼ることが出来ないという点では、演出家の腕がより試される舞台にもなりますね。また、どこかでチャレンジしてくれる劇場があるといいのですが・・・!いっそ、バレエにしてしまってもいいですね。誰か、よろしくお願いします。

ではでは、今日はこんなところで。

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