ディズニー『ノートルダムの鐘』舞台版は、アニメ映画とはもはや違う作品だった!

こんばんは、ディズニー大好きのうめこです。

うめこが勝手に作ったミュージカル分類では、「ディズニーミュージカル」というカテゴリーがなかなかの勢力を保っています。なにせ、アラン・メンケンを始めとして、スゴイ作曲家揃いですからね。

まず有名なのは『ライオンキング』でしょうか。劇団四季のCM でお馴染みですね。先にご紹介した『Billy  Elliot』と同じエルトン・ジョンが楽曲を手掛けていますね。彼は他にも『アイーダ』というディズニーミュージカルの作曲もしています。この『アイーダ』はディズニーミュージカルの中では珍しいアニメ原作のない舞台です。元々はヴェルディのオペラですね。何故かサッカーの試合で好まれるている「凱旋行進曲」はこのオペラの曲です。

他にアニメ映画から舞台化した作品としては『美女と野獣』『ターザン』『メリーポピンズ』『リトル・マーメイド』『アラジン』『アナと雪の女王』など。これらは日本で上演する場合は基本的に劇団四季でやっていますね。『アナと雪の女王』が劇団四季で上演されるのも時間の問題でしょう…


そして、今回ご紹介する『ノートルダムの鐘』もアニメ映画から舞台への流れに乗った作品なのですが、これが、凄いことになっていたのです!!


うめこの観劇した中では少なくとも『美女と野獣』『リトルマーメイド』『ライオンキング』『メリーポピンズ』はあまりアニメ映画と大きな変更点はありませんでした。新曲が加わったり、ちょっと追加エピソードがあるくらい。しかし『ノートルダムの鐘』「ま、アニメと変わんないでしょ」呑気に観劇したら危険です。その容赦ない変更に打ちのめされます。うめこが極力ネタバレせずに人に伝えるときは「リトルマーメイドが、原作の『人魚姫』のようになった感じ」と言っています。まさにこれ。 


では、ここからの記事では『ノートルダムの鐘』アニメ版、舞台版、共に容赦ないネタバレをしていきますよ。知りたくない人はそっとトップに戻り、とりあえず『Billy Elliot 』について復習してください。

ディズニーミュージカル『ノートルダムの鐘』あらすじ ざっくり紹介

 
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舞台は15世紀のフランス、パリ。孤児であったカジモドノートルダム大聖堂司祭フロローに育てられ、鐘つき男として大聖堂より一歩も出ることなく暮らしていた。彼は体つきが他人とは違うため大聖堂の外には出てはいけないと強くフロローに命じられていた。しかし、カジモドは屋根から見下ろすだけの外の世界に憧れを抱いていた。そんな中、パリの町は年に一度の「道化師の祭」に賑わっていた。そこには音楽と躍りを生業とするロマ達の姿も。町の活気に誘われ、友人のガーゴイル達に背中を押されて、とうとうカジモドはフロローには秘密で外へ出る決意をする・・

作曲家はアラン・メンケン。ディズニーアニメ好きからすると、名前だけで鼻血が出てきそうな偉大な作曲家です。そして、面白いのが作詞担当のスティーブン・シュワルツ。彼は人気ミュージカル『Wicked』では作曲をしています。作詞も曲も素晴らしいなんて・・・!

さて、登場人物について。まず主人公であるカジモドなのですが、彼の見た目については英語では”Hunchback“とストレートに表現されています。この ”Hunchback” という単語なのですが、日本では使用が制限されている言葉なのですよ・・・特徴のある体つきを表現する言葉です。しかし、ディズニー版の原題はずばり『the HUNCHBACK of NOTRDAME』。ドドンと題名に使われています。

そして主要人物全員の想いを一身に集めるヒロイン、エスメラルダ。アニメ版ですら色気たっぷりで、今までのディズニープリンセスたちとは何かが違う・・・けれど、逞しいとても魅力的なヒロインです。 エスメラルダ達の民族を上の記事では「ロマ」と表現しましたが、この言葉にピンとこない方も多いのではないでしょうか。少し前まではジプシーと呼ばれていた人々のことです。この呼び方も、近年ではふさわしくないと認識されています。

続きまして、軍人であるフィーバス。彼は・・・ディズニー版であればアニメでも舞台でもまあまあの奴なのですが。原作により近いフランスミュージカル『Notre-Dame de Parisでは最低最悪のダメ男だったりします(うめこ的に)。オペラ『蝶々夫人』のピンカートンと同類のダメさと言いますか・・・まあ、ディズニー版ではいい奴ですね、うん。

最後に、カジモドの育ての親フロロー。何を隠そう、このフロローの描かれ方の違いで映画と舞台は「別のもの」となったとうめこは考えています。

どこが違う?『ノートルダムの鐘』アニメ版と舞台版

まず、アニメ版と舞台版の違いを象徴する歌詞の変更点を紹介します。

アニメ版

Sing the Bells of Notre Dame.

Who is a Monster,and who is a man?

Animation『THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME』 Music by ALAN MENKEN Lyrics by STEPHEN SCHWARTZ “THE BELLS OF NOTRE DAME”

「歌え、ノートルダムの鐘」

「誰がモンスターで、だれが人間なのだろう?」

暗に姿は醜いが心の真っ直ぐなカジモドこそが人間であり、フロローこそがモンスターであると歌っています。

続きまして舞台版

Sing the Bells of Notre Dame.

What makes a monster?And what makes a man?

THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME』 Music by ALAN MENKEN Lyrics by STEPHEN SCHWARTZ “THE BELLS OF NOTRE DAME”

「歌え、ノートルダムの鐘」

「何が人を人たらしめ、何が人を怪物にするのか」

ここからは私の解釈ですが、アニメ版『ノートルダムの鐘』ではフロローは 「何故そうなってしまったのか」という考察すら無用の ある意味純粋な悪=怪物とされ、舞台版ではむしろこの物語そのものが「何が人だった彼を怪物にしてしまったのか」観客に考えさせる物語へと変化したのではないかと思うのです。

フロロー考察。ただの怪物から、愚かな人間への変化

●舞台版のオープニングにフロローの生い立ちが追加された。

●カジモドとフロローの関係

アニメ:カジモドの母親(ロマ)をフロローが殺害し、カジモドも殺そうとしたところを目撃した司祭に咎められ、贖罪として彼を引き取るように諭される。

→舞台:カジモドはフロローの甥であった。

●フロローの職業

アニメ:パリの最高裁判事 

→舞台:ノートルダム大聖堂の大助祭(キリスト教の聖職者)

●おまけ:ディズニー版だとまあまあいい奴のフィーバスですが

フランスミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』ですと、婚約者がいるくせにエスメラルダにちょっかいを出し、婚約者に激怒されて言われるままにエスメラルダの処刑に加わるダメダメ男。むしろ、うめこはこちらのバージョンではフロローよりフィーバスの方が嫌いです。

舞台版だと、フロローの生い立ちや職業を見直すことによって彼を人間としての苦悩があった者としての肉付けをしているという印象を受けますね。実際、初めて予備知識ないままに四季の舞台版を観劇したときは、この新しい要素のために「別の物語になった」と強烈に感じました。

「正義VS悪の怪物」の物語から、「人間のエゴVS人間のエゴ」の物語へ

ディズニーアニメは正義VS 悪の怪物という極めてシンプルな対立で物語を構築したため、時にはご都合主義と皮肉られるハッピーエンドで終わりました。ただ、主人公の恋は実らないというディズニーとしては非常に珍しい結末でしたが。しかし、フロローを愚かではあるが、あくまで人間として再構築した舞台版ではこの正義VS 悪の対立が人間のエゴVS 人間のエゴとなり、単純なハッピーエンドでは収拾がつかなくなってしまいました。ゆえに、アニメ版では神の裁きの象徴でもある雷に打たれて死んだフロローは舞台版ではカジモドに殺されエスメラルダを処刑から救うことは叶わず、数年後カジモドとエスメラルダの白骨が発見されるという理不尽ではあるが、最後まで足掻いた生身の人間達なりの結末へとたどり着いたのではないかと思います。

元々好きな作品でしたので、アニメ版の誰も手を汚さずに悪は死んでいった、エスメラルダとフィーバスは結ばれて、カジモドは二人と友達になりましたというハッピーエンディングも嫌いではないのですが、舞台版の生々しい人間同士の削り合いを観てしまうと何だか物足りないと感じてしまうようになりました。

今までは単なる悪役としか見なかった人物の背景や時代を知ると、とたんに一人の人間として解釈出来るようになるという現象は色んなところにあって、有名なところだとシェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』のシャイロックでしょうか。これは当時のユダヤ人に対する人種差別も相当に関わっていますからね。うめことしては、『トム・ソーヤーの冒険』インジャン・ジョーも気になる存在です。彼もアメリカの先住民族の血が入っているから……と揶揄されるシーンがありますから。

 
ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫)

 
トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

舞台版『ノートルダムの鐘』新曲が素晴らしかった!  

今までのディズニーミュージカルがそうだったように、『ノートルダムの鐘』も舞台化にあたっていくつか新曲が追加されています。その中でのうめこのお気に入りは「Made of Stone」。カジモド役の歌唱力が思う存分発揮されます。こういう激情をのせて叫ぶような曲、大好きです。曲そのものは絶望に打ちのめされたカジモドの悲惨な歌なのですが・・・

また新曲ではないのですが、アニメ映画ではエンディングで流れた「Someday」が劇中でエスメラルダとフィーバスデュエットで歌われています。この歌の歌詞がほんっとうに素晴らしいんですよ。同じように悲劇で終わるミュージカル『West Side Story』「Somewhere」を思い出します。これも、「いつか、どこかに」あるだろう幸せと平和を願う曲であり、夢に描く世界が美しいほど、今の悲しみが際立つという切ない一曲です。

『ノートルダムの鐘』舞台化で終わりではなかった・・・!

さてこの『ノートルダムの鐘』ですが、なんと次の展開がすでに発表されてします。

まさかの実写化!!

最近、ディズニーは実写化の波がスゴイですね。舞台版に寄せてくるのか、ハッピーエンドにもっていくのか、これは楽しみです。

舞台版も現在劇団四季にて上演中ですので、興味を持たれた方は是非是非お出かけください。

ではでは皆様、よい観劇を。

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